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向井くんはすごい!(下)コミック紹介|漫画レビュー・感想

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向井くんはすごい!|(下)ももせしゅうへい

上下巻で完結している作品です。

作品紹介

みんなのヒーロー向井くん。
人よりも優れていているから、彼は受け入れられる。
“向井くん”だから受け入れられるのだ。

…本当の意味での“受け入れる”ってなんだろう。
各々が見つけた答えとは――。

大人気WEB漫画が加筆修正のうえ、描き下ろしを加えて上下巻同時発売!

 

引用:コミックシーモア

 

感想

ポップな表紙とは裏腹に「骨太なテーマ」でした・・・

下巻で感けるすると思って心構えして読みましたが、心構えして読んだにもかかわらず予想以上のすごい展開でした。

まず、寺西の更生エピソードで、寺西が今までの自分がしてきた行いを悔やみ関係者に誤っていくシーンが公開処刑すぎてキリキリしました。でも確かに、高校生くらいの年頃って、「謝罪⇒判決を待つ」みたいな民衆の反応で裁かれる感じあったよなと回顧しました。寺西の場合は、ヒエラルキートップに対して悪行をしていたこともあって許されるまでの時間が長いこと長いこと。公開処刑って感じでした。上巻の印象では臆病者と思っていた寺西が、これまで自分がしてきた行いに対して責任をとって謝罪に回る姿は、とても意外でした。謝罪してもすぐに許されないんですが、そこでもひるまずに向き合っていたのには自己肯定感を得た強さがあったと思います。ここでも向井くんは存在は大きい。

寺西のこの覚醒は、逆の意味で、森谷(もりや)を覚醒させます。同じ者同士分かり合えるという寺西に対し、いつも客観的に見ていた森谷が感情的になり、攻撃的に拒絶します。森谷は、ますます向井くんと自分との差を実感し、「くだらない」と距離を置いていきます。

ストーリーは、LBGTの勉強会の内容を発表するという流れに進み、発起人のひとりであるつぐみは、仲間たちの考え方に疑問を抱き始めます。寺西を許すか許さないかという話の中で「つぐみだって可哀想!」と勝手に気持ちを決めつけられたことをきっかけに、一方的に馬鹿にされるのも嫌だけど、一方的な同情も嫌だ!と向井くんの気持ちに寄り添い始めます。つぐみは向井くんの本当の気持ちを知りたいと思いますが、そこでは向井くんの気持ちは語られず・・・読者にメッセージを投げかける構成となっています。

さて、下巻の盛り上がりどころ、ついに斎藤くんのターンです。初っ端なら向井くんが苦手と言っていた斎藤くん。斎藤くんが向井くんを苦手というのには訳があるのですが、それを隠して自分の利益(つぐみ)のために勉強会に参加しています。勉強会は、言葉だけ見れば、マイノリティを受容しているという多様性を認めた活動なのに、活動の実態はエンタメになっていないか?と読者が疑問を持ってしまうレベルのもので、この辺りは森谷くんのセリフを追っていけば、この勉強会がレベルの低いものである解くことは明白です。性的マイノリティは必ずしも悩んで、その苦しみにもがかないといけないのか?向井くんのように悩みのない性的マイノリティではダメなのか?それは受けて自身の呪いであって、受け手の呪いを性的マイノリティにライドさせるなよ的なメッセージだと受け取りました。斎藤くんは、友達にも恋人にも蔑ろ(ないがしろ)にされているように感じ、次第に苛立ちます。この斎藤くんの存在によってストーリーのバランスが取れていると思うのでよくできた構成だと思いました。

向井くんのインタビューに意気込んで根掘り葉掘りきいた勉強会メンバーでしたが、向井くんの応答が「性的マイノリティに悩んでいない」という主旨の内容ばかりで、期待していたありがちな悩みや苦労エピソードが向井くんのパーフェクトヒューマンにはありませんでした。そのため、勉強会の発表内容で「向井くんの過去の悩みや現在の頑張る姿」をまとめたい面々と、「でも現実の悩みのない向井くん」との食い違いが問題となりました。結局、自分勝手な解釈をしてエンタメとしてみてしまっているのではないか?と疑問を持つ展開となります。

そして、仕切り直して、森谷による向井くんのインタビューで、向井くんは実はしたたかな分析家の面を明らかにします。といっても、上巻でいきなりスクールカーストの評価点の話をしていたので向井くんのしたたかさはその時点で明らかだったかもしれませんが。しかも、実は森谷の気持ちも汲んであげらる向井くん・・・恐らく現在のパーフェクト向井くんに至るまでには色々なことがあったのだと思われますが、それを一切出さないさすがの向井くんです。

ですが!

とある斎藤くんの裏垢のリツイートが事件を起こします。

事件は勉強会の発表の日、発表時間が迫る中、とにかく森谷が走ります。詳しくはお読みいただきたいのですが、ここでも性的マイノリティの呪いに振り回される森谷。本当に「向井くんはすごい!」のか?タイトル自体が伏線だったなんて誰が想像できますか!最終話の展開には鳥肌です。

そして、2人とも「ありのままを隠しながら生きている」という共通点がある森谷と斎藤くんの一騎打ち!最後のコマでマイクの前に立つ森谷が何を言ったのかは、読者に託されるわけですが、何を話していたにせよ、彼らの学校生活は続いていくんだと思うと見ているこちらが緊張する。何を話していても、何が正解で何が不正解なんてすぐには判断はできません。でも、向井くんに、斎藤くんに、気付かされたことで自分を振り返った森谷の発言はきっとその時の最適解だったのだと思うし、描き下ろしの向井くんを読めば、やっぱりパーフェクトに見える向井くんも大変だったよねと思わずには言われなかった。でもこの気持ちがやはり当事者の気持ちを勝手に解釈しているわけなので、本当のことなんて誤魔化しているうちは何もわからないものですよね。

 

ひと言

これはですね、上下巻セットで一気に読むのがおススメ!

すごく考えさせられるテーマでした。一見、ポップなフォント、クラスメイト達が笑っている表紙で、学園モノユートピアかよと騙されたのですが、中身はリアル青春譚で重みのある後味でした。答えは書かれていないけど、考えるきっかけが随所に散りばめられていて、知らないことや知ったかぶりを恥じる気持ちになりました。登場人物それぞれが個人の損得勘定で動くので、擁護の視点、反対の視点、静観の視点などいろんな視点の立場で描かれているのが読者に向けて、性的マイノリティってどうなんですか?って投げかけている・考えさせていると思いました。

どんなひとにおススメかっていうのが難しいのですが、性的マイノリティにかかわらず、なにか新しい価値観に出会う時に、「認めてあげよう」っていう上から目線の傲慢な人は絶対に読むべきですし、上から目線の傲慢な人でなくても、共感した先に何があるのかを知りたい人は読めば自分で考えるきっかけになるのではないでしょうか。本書のテーマは性的マイノリティでしたが、性的マイノリティ以外でも価値観の多様化が叫ばれている現代で、いずれかのマイノリティに属している人を一括りにしてラベリングしているようじゃ世の中じゃダメですよねと言いたくなる一冊です。こういうものを教材にしてどう感じたのかをディベートするカリキュラムがあれば、子供たちの世代がもっと生きやすくなりそうだと思いました。

 

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  • この記事を書いた人

りのへよ

▶︎育児&趣味&仕事についてのブログ運営中▶︎情報収集が好きだけど忘れっぽい30代ワーママ▶︎5歳と0歳の5歳差育児中▶︎カネなし趣味なし友達なしのないない尽くし▶︎数字は苦手・・・でもポイ活&セール情報は大好き▶︎エンタメ好きなので作品レビュー記事多め※当ブログではアフィリエイト・Google AdSenseによる広告を掲載しています

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