異能って聞いたら、何を思い浮かべるかしら?
異能と聞くとバトルマンガに多い設定よね。『僕のヒーローアカデミア』みたいな個性の話を思い浮かべるわ!
『異能』って聞くとバトルマンガを想像する人が多いと思うけど、そんな世界観と真逆の『異能を持って生まれてきながら争いのない平和なマンガ』を紹介します!
しょうもないのうりょく【全3巻完結】
本日紹介する漫画は、高野雀先生の『しょうもないのうりょく』(全3巻完結)です。
ストーリーの舞台は「オフィス」
そこには、この世界では誰もが取るに足らない「異能」を持っている。
- 見るだけで服のサイズが分かる
- 果物の旬が分かる
- 蚊を一撃で倒せる
など、個性豊かな「異能」を持った人たちが働いているというSFコメディです。
このオフィスで働く人だけが特殊な異能を持っているのか・・・というと、そうではなく
この物語の中では、誰もがなんらかの『異能』をもっているという設定があり、その異能が「便利なんだか、便利じゃないのか・・・」っていうスレスレの、ちょうどいい「しょうもない能力」なんです。
主人公OL・星野は、書類を崩さずに詰める異能を持っていますが、ホントに「しょうもない」ですよね!(褒めてます)
異能でバトルしない設定が斬新
異能がある・・・という設定を聞くと、バトルものか?とつい思ってしまうのですが、
バトルのないオフィスマンガです(笑)
バトルせずに何をしているかというと、キャラ達みんな真面目に会社に所属して働いています。
しかも異能を使わずに。
異能を使って社会の闇を暴くぜ!とかそういうのでもないし、『異能探偵事務所』とかでもないです。
何やってるかというと普通の”ソフトウェア作ってる会社”(3巻file.32参照)
で、そのシステム会社にしれッと『不老不死』キャラがいます(笑)
異能がある世界なのに皆が真面目に働いている!このギャップが良い!
異能を活かさない職場
オフィスが舞台ということは、異能を発揮した「お仕事系」マンガなのか?
というと、そうではなく。
主人公界隈は、自分たちの持つ異能を発揮せずにフツーにお仕事に励みます。
誤字脱字を見つけることができる異能の持ち主も出てきますが、
『誤字脱字が分かるのはいいんだけどそこで引っかかって全体が分かんなくなって困るのよ~』
しょうもないのうりょく1巻(file.4)より引用
と言ってしまうくらいの軽さ。
この漫画の中では『異能』は生活の知恵・雑談のネタ程度の立ち位置です。
不老不死の無駄遣い
開発部の藤原さんは不老不死という超レア異能で、他のマンガなら、世界を救ってるレベルの最強クラスだと思うんですけど、このマンガではシステム会社の開発部に所属して会社員をしています。
藤原さんの異能が『不老不死』と知っている主人公OL・星野さんも『この人、不老不死なんだ~』と流していて『世界のために戦って!』とか言いません。
同じ会社に不老不死がいても『珍しいなぁ』のノリで受け入れています。
ちなみに、会社に派遣されている外部のコンサル・井上さんも『藤原さん=不老不死』と知っていながら、当然のように受け入れています。
不老不死という最強カードを無駄遣いする贅沢な設定
本当なら『不老不死』というステータスを遺憾なく発揮して、世界を救ったり・愛する人を守ったり・最強のボスだったりする・・・というのが定番の展開だと思うのですが、そういうことは一切ありません。
ちなみに『不老不死』の張本人は、自分の異能が『不老不死』だと知らないので、半永久的に続く自分の人生を悲観して絶望することもありません。
2巻『異能診断詐欺』
2巻の見どころは「異能診断を謳った詐欺まがい」の事件が起こることです。
といっても、基本平和マンガなので、詐欺っぽいだけで、大事になったりしません。
大事にはならないですが、実にリアルに「異能」を捉えているなと思った巻でもあります。
『異能』という不確かな能力を偽ったりする人も・自分の異能を勘違いしていたりって、現実世界にも通ずる真理だよなと。
3巻『ラブコメ展開』
最後まで世界を巻き込んだバトルはないのですが、身近なところでラブコメ展開が・・・。
不老不死と恋愛するという展開には、読んでいてついつい「よく考えて!」思ってしまった(笑)
こんなに不老不死を軽く扱うマンガ今まで見たことない
3巻の面白さは他にもあって、
それぞれの”異能たちの掛け合わせ”みたいなところも面白かったです。
『さっきまで居た場所がわかる』×『直前に食べたものがわかる』で『お昼に角の牛丼屋に・・・』みたいな。
二人の異能が合わされば、ランチに何を食べたかわかっちゃうぜ~?的な。
これ結構すごい異能と思うけど。
でも、この優れた異能をこのマンガでは雑談のネタにするだけ(笑)
『さっきまで居た場所がわかる』ならマーケティング会社とか探偵とか、『直前に食べたものがわかる』なら医者とかシェフとか。
他に活躍できる職種あるのに!って異能の人がたくさん出てくるけど、みんな真面目に働くシステム会社の会社員なので、めっちゃ平和。
唯一、転職した”見るだけで服のサイズが分かる”人は良いヘッドハンティング先で”適材適所”で良かったです(笑)
能力者だらけなのに、その能力を活かさないで仕事している人たちの「しょうもないのうりょく」を紹介しました。
能力を使って仕事する人もいれば、能力を使わずに仕事する人もいて、『生まれ持った個性』を過大視していないというのが肩の力が抜けた感じですごく良かったです。
『しょうもないのうりょく』だからと言って、卑屈になるわけでもなく、かといって持て囃させるわけでもなく。
生まれ持った資質なんて関係ないよ。っていう優しい世界観が心地よかったです。
ツッコミながら読むとめちゃくちゃ面白い!能力者だらけなのに能力を活かさないという設定が斬新すぎました!癒し系マンガを読みたい人におススメの一冊です。