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11【1巻完結】コミック紹介|漫画レビュー・感想

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11|いがわうみこ

1巻完結の作品です。

春義にまつわる、11のお話。 重い感じで来るかな?と思ったら、1話目笑っちゃう感じで始まったので驚きました。 で、春義って何者?という疑問が読み進めると解かれて行くわけですが、この11話で構成される展開が大変お見事でした。 彼に関 わった人々の目線で、春義が語られています。 彼の人物像が見えてくると共に、語り手である人々の生き様も垣間見えて、全体を通すと群像劇の様に思いました。 個人的には、春義がいつも俯瞰で人生を捉えて居るように見えました。 逃げたくなる現実に逃げ切れなくなったり負けきる前に、意図して軽やかに、しなやかにやり過ごしている様に見えました。 この重いテーマで読者に何も背負わせない春義が、愛しくて堪らなくなりました。 辛いときにこういう乗り越え方をする人、好きです。 自分が辛くても、周りへの優しさを失わない春義。 私も可愛くてたまらん(4話より)。 後半に進むに連れて、11話目にどう締め括られるのかヒヤヒヤしてきたのですが、まさかまさかでした。 うん、まさかまさかの結末。 こういうの…大好きです。 1冊という漫画の枠を十二分に活かした、良作だと思います。

 

感想

11個の短編で1つの話に繋がっている構成で、途中の深刻さに結末はどうなってしまうのか・・・とハラハラするものの、最後には「良かったぁ」と涙ほろりする作品。話の題材は重めのためその点で言えば、読む人を選ぶ作品とも言えるかもしれませんが、読後はきっと暖かい気持ちになれるお話です。静かでいて、人間 の毒や、ダメさや、優しさを感じる話が好きな人は楽しめると思います。

私は、率直に面白かったです。オムニバス形式で最初はよくわからない話が続くので、最初は「あれ?もしかして様子がおかしいギャグ漫画なのかな?」と思って読みましたが、最後まで11個のお話を読むと、とんでもなくシリアスな人間模様を描いた作品でした。読んでいくうちに「もしかしてこれは凄い漫画なのでは?」と高揚する気持ちになりました。実際に11個の短編はどれも面白かったです。

正直、読み始めは何のことかよくわからなかったので「わかりやすさ」という部分では読者の読解力が試されてしまうのですが、最後まで通して読んで初めて話の深さがわかります。そのため、この漫画を最初だけで判断する人にはおススメできないなと思います。読むなら最後の結末まで(できれば作者のあとがきまで)見届けて欲しいです。

個人的にハラハラしたのは春義の女性のタイプです。 壮絶な人生なわりにまともに優しく育ったかと思えば、女性の好みがトラウマと絡み合った感じで、やばいこれ不幸フラグか・・・と思わずにはいられませんでした。

ちなみに、最後は「強制終了」のような世の中の不条理的も感じられて、それはそれでいて納得のいく終わり方でした。

どうして、最初から話がスーッと入ってこなくて、「これはギャグマンガなのでは・・・?」と思うのか、恐らく作者の書き方によって創始向けられているように思います。
深刻さの点と点が繋がるまで、「どこか様子がおかしいのはわかる・・・けど、この違和感はなんだ???」とハテナが膨らんでいく感じは、11人の女の目線から、現在と過去、外面と内面と主人公に関わる人物が各方向から主人公の「春義」に向かって一方向また一方向とカメラを向けているように各話が描かれているからです。11個の短編は直線的に描かれることはなく、現在と過去を行ったり来たりして、さらに表面の外見だけを語る人、内面の深刻な部分を語る人という風に、語り手によって見えている深度も異なります。そんな、いろんな人からの視点で物語が繋がり合うお話だからこそ、読むなら最後まで1冊一気読みをおススメしたい!最初の違和感で、離脱しちゃう人が居るとしたらすごくもったいない~!と引き止めたい作品。

いがわうみこさん知る人ぞ知る作家さんのようですね。いがわうみこさんで調べてみると濃いファンが多いみたいです。
たしかに、各キャラクターの視点がしっかりしていて毒もきいてて、それでいて笑えるところもあり。一見、そっけない描写なのに物語に血が通っていて、根っこに人への愛情が感じられます。

また電子書籍版のあとがきに書いているように、著者のアイデアを受け止めてこの構成でコミックスにした編集者の方も素晴らしいと思いました。

 

ひと言

明るく笑えるお話ではないけれど、ひっそりとした暖かな読後感のストーリーです。

1冊でこんなに完成された世界を作れるなんて、いがわうみこ先生、とても天才・・・そしてとても頭の良い方だと思いました。

「11」というタイトルを妄想解釈してみました。まず、11という数字の性質ですが「素数」と呼ばれるもので、素数というのは「割り切れない」という特徴があります。「割り切れない」という感情はこの作品の中ではキーワードになると思います。割り切れない数字は11の他にもあり、一つ前は7、一つ後ろは13です。でも7だとラッキーセブンという言葉が連想されるし、13では13日の金曜日の不吉なイメージがあります。フラットなイメージでかつ割り切れない11という数字は、1が二つ独立して交差しないいつまでも平行線なイメージもありますね。こういう字面のどことなく寂しげな印象はこの物語にあっていると思いました。次に、11はトランプでいうとジャックですね。13種類のカードのなかでも、ゲームのパワーバランスが強いカードである11、12、13の絵札。13が王で、12が女王なのであれば、普通なら11のジャックはその子どもである王子や王女、つまりプリンスやプリンセスなのでは?と疑問に思いますよね。実はこのジャックというのは人名ではなく、「召使い・家来」を意味する単語なんだそうです。ここにも11という数字と物語の不穏な雰囲気の共通点がありました。タイトルの意味を考えてみるとその独特な世界観を感じていただけると思い考察してみました。

最後には「良かったぁ」と味わい深い作品。話の題材は重めのためその点で言えば、読む人を選ぶ作品とも言えるかもしれませんが、読後はきっと暖かい気持ちになれるお話です。静かでいて、人間 の毒や、ダメさや、優しさを感じる話が好きな人は楽しめると思います。

1冊完結で濃い内容の漫画をお探しの方におススメしたい1冊です。

 

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りのへよ

▶︎育児&趣味&仕事についてのブログ運営中▶︎情報収集が好きだけど忘れっぽい30代ワーママ▶︎5歳と0歳の5歳差育児中▶︎カネなし趣味なし友達なしのないない尽くし▶︎数字は苦手・・・でもポイ活&セール情報は大好き▶︎エンタメ好きなので作品レビュー記事多め※当ブログではアフィリエイト・Google AdSenseによる広告を掲載しています

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