君に会えたら何て言おう|ねむようこ
1巻完結の作品です。
産休入りまで指折り数えている働く妊婦さんに産休が始まってゆっくりする時間ができたら是非読んでいただき一冊。
作品紹介
キリと夫のむっちゃんは、結婚して数年の仲良し30代夫婦。
子供を作るならそろそろ急がなきゃいけない年頃なのはわかってる。
けれど、後戻りできない一歩を踏み出すのがこわい…。
キリは周りのおめでたい報せを聞く度に少しずつ消耗していくが、
夫のむっちゃんはどこか他人事のようで…?
そして突入した初めての妊娠は、知らないことの連続だった――!悩める未産の女性たちへ。妊娠中のあなたへ。妊娠を懐かしむママたちへ。
そして、男性たちへ。
すべての人に届けたい、初めての妊娠・出産ストーリー。
引用:コミックシーモア
感想
ジーン…( ´;ω;`)感動した・・・
今の仕事が楽しくて今の自由な生活を手放したくない…でも子供を持つことを年齢的に考えないと…と悩む層に是非お勧めしたい一冊。
会社勤めやフリーランスで働きながらマタニティライフを送っているママは、産休入りまであと何日かな?とか、妊娠してからは体調が万全じゃなくて仕事に身が入らないとか、体のマイナートラブルとか、出産準備どうしようとか、色々と心配事があると思います。出産の期待と、生活や仕事面での不安、そんな期待と不安の中を行き来している妊婦さんに届くメッセージが詰まった内容でした。
仕事?妊娠?そんな決断ができないまま、焦りもある年齢に差し掛かった主人公に感情がライドしました。初めての妊娠で感じる不安、期待色んな感情がまとめられていて、今まさに妊婦さんであるとか経産婦であれば少なからず共感できる部分があるのではないでしょうか。
私は共感の連続で、しょっぱなから「わかる!」って頷いてばかりでした。私は今勤めている会社に転職してからわずか半年で妊娠が発覚しました。普通に考えて転職半年で妊娠って非常識ですよね。今勤めている会社はコンプライアンス的にもホワイト企業なので嫌がらせなく入社1年目で産休と育休を取らせてもらうことができました。本心では「中途入社で半年で妊娠しましたとかふざけんな!空気読めよ!」と思われていたとおもいます。もちろん当事者である私も、その時は転職間もないくせに妊娠して申し訳ない、後ろめたいというネガティブな気持ちで一杯で本当につらかったです。妊娠がわかってハッピーというよりは、むしろ、これからどうしよう…私…とお先真っ暗になったような感覚。妊娠初期のつわりで体調を崩して仕事のメンバーに迷惑をかけたり、仕事も半人前なのにどんどんとお腹は大きくなり産休が近づいてきて、当時の精神状態はズタボロでした。
私の場合、転職した会社は、仕事のやりがいがあって裁量もあって、妊娠がわかるまでは毎日が楽しかったので、仕事にやりがいを感じていて仕事を頑張る主人公の姿が、転職当時の私と被ってしまって、涙なしに共感せずにはいられませんでした。仕事も私生活も順風満帆な時期に妊娠発覚。前もって準備していても、そうでなくても「初めての妊娠」という期待と不安に一気に飲み込まれる瞬間。主人公が感じたであろう感情が手に取るように共感できました。
マタニティマークのエピソードでは、主人公が「内臓の状態」と言っているのをひどい発言、母親の自覚がないと思う人もいるかもしれませんが、私は「内臓の状態」という表現は実にリアルだと感じました。というのも、私も主人公と同じ感覚だったので、当時の自分を見ている気分だったんです。今となっては4歳児の母として多少自覚を持って育児をしているけど、初めての妊娠で自分の中の優先順位が自分のこと、仕事のことで占められていると、お腹の中のエコーを通してしか見られない生命という存在に、どう向き合えばいいのか距離感に戸惑ったりしました。大きくなる胎児、でも出産準備は何も進んでない…という現実とのギャップがありました。
夜の眠れない時間の色々と考える時間、これも主人公と一緒で、日中仕事をしている初マタニティママにはあるあるのエピソードなんじゃないでしょうか。とにかく体調がすぐれない中の日々の業務、ミスのリカバリーに後輩指導、資料作成、メール返信、雑務をこなし、引き継ぎの下準備、妊婦だからと言って仕事は手を抜かないから当然なんですが、妊娠は病気じゃないといっても本当に泣けてくるくらいツラい瞬間があるんです。
それに、自分の体重管理と食事の配慮、身だしなみにも気を使い、家事、出産準備、とにかく妊娠してからは目まぐるしい忙しさです。ベッドに入ってホッとすると胎動を感じて、夜中には目が冴えて寝られなかったり、トイレに何度も起きたり、腰痛がつらかったり、足が浮腫んだり攣ったり、自分の体なのに自分の体じゃないような不調の連続。そんな色んな大変なこと、一つ一つは小さいことでも妊娠のマイナートラブルと言ってスポットライトが当たらないくらいの小さな事でも実は結構疲弊していたりします。そして、また仕事に行く…という、いろんな不安が押し寄せてくる孤独に感じる夜がある人なら共感してもらえる内容となっています。
主人公の里帰りのための実家の片付けシーンもよかったです。自分の青春の思い出の物を捨てて、自分の人生が新しい細胞に置き換わるような表現はすごく感動しましたし、実体験として産休に入ってから出産までの時間で、私自身、自分の趣味のものとか青春時代のものを断捨離したので、今までの私とこれからの私の切り替えがありました。大切なもの全てを捨ててしまう事はオススメしませんが、なんとなく理由がなくて捨てられなかったもの、私の場合は服やコスメなどは思い切って捨ててみると流行りを追いかけていた自分から脱却できて、出産前に清々しい気持ちになりました。
最後の分娩台のシーン、ここは感動して感極まり、ジーンと涙して読みました。出産の痛みに覚悟を決める主人公の言葉に、頑張れ!というエールを送る気持ちで読みました。私は妊娠初期の頃から分娩の痛みがとにかく怖くて怖くて分娩のことを考えると眠れなくなるくらいどうしようもなく怖がっていました。当時の上司(男性で4人のパパ)に「とにかく不安で、怖いんです…怖いんです…」とネガティブな発言ばかりしていました。多分上司はママになるのが怖いと思ったでしょうが、もちろん母親になる怖さもあったけど、その前に分娩が怖くてしょうがない時期が男初期の頃から割と長く陣痛の直前までありました。
どう転んでもお腹の中の赤ちゃんを産むのは自分しかできないので逃げる事は出来ないのですが、その覚悟が決まるまでは、ネットで調べては不安になり…というのを何回も繰り返してはウジウジしていました。
でも一度覚悟が決まれば分娩台の上では強くなると思いました。覚悟が決まるのは、もう産むしかない!って分娩台の上で絶体絶命になってから。自分のお腹から出してあげるにはこの痛みに腹を括るしかない!と勢いづく瞬間。主人公の心の声は、まさに私も分娩台の上で感じた言葉たちでした。
ひと言
仕事にやりがいを持っていて、初めて妊娠した妊婦さんや、初めての妊娠で体調を崩しながらも日々頑張る妊婦さん、ワーママや経産婦のママさんにオススメな内容です。主人公の内面の葛藤が仕事を頑張りたい世代に響くと思います。一冊完結ということで、妊娠出産にまつわるエピソードは内容がかなり厳選されていますが、体の変化、心の変化、仕事の取り巻く環境の変化、パパの意識の変化、など初マタニティにあるあるな事例ばかりで、今まさに仕事を頑張りながら、出産の不安を抱えている人に寄り添える内容になっていると感じました。産休や育休中の新米ママさんや、仕事を頑張りたい世代のこれから妊娠を考えている人などにオススメしたい一冊です。たぶん、今後二人目を妊娠することがあったり、初めての妊娠の時のことを懐かしく思った時なんかに読み返すだろうな~と思う作品でした。